列車内ACコンセントの周波数

先日、山形新幹線「つばさ」のE3系2000番台に乗車したときのこと。普通車窓側座席下にACコンセントが設けられているのですが、よく見ると「50Hz」と書かれていて「おや?」と思ってしまった次第。

「東日本なんだから50Hzなのは当たり前じゃないの?」というのは普通の人の感覚。「列車内なのに60Hzじゃないの?」というのがよく訓練された鉄ヲタの反応。

電車には、モーターを駆動して車輌を物理的に走行させるための「主回路」の他にも、ブレーキ用圧縮空気を生み出す空気圧縮機や信号保安装置等「運転」に必要となる各種機器、車内照明や空調装置といったサービス機器等、各種の電装品を動作させるための「補助回路」が存在します。これらの電装品のなかでも比較的大電力を必要とするものは三相交流を電源とするため、多くの場合、架線からの直流電流や単相交流電流を直接用いるのではなく、車上で電動発電機や静止型インバータにより三相交流を発生させ補助回路用電源とする方法が採られます。車上で「自家発電」するわけですから、地上の電源周波数とは関係なく、一般には60Hzの交流が出力されます。気動車や客車に搭載されているディーゼル発電セットから得られる電力も、同様に60Hzが一般的です。

一方、交流電化用車輌の場合、主変圧器に三次巻線を設けて補助回路用の交流を取り出す手法が採られることもあります。この場合、得られる交流は架線電流と同じ周波数の単相交流となり、各種電装品も単相用のものが用いられます(三相交流が必要な場合は、単相交流をいったん直流化しインバータを介して取り出す)。前述のE3系2000番台もこの手法が採られているわけで、決して「東日本だから50Hz」という単純な理由ではありません。補助回路の電源の取り方次第では「東日本なのに60Hz」となっていた可能性もあります。

ところで、主変圧器三次巻線から補助電源を得る手法は、JRグループ発足直後、冷房化率向上のためにJR九州が421・423系に対して冷房改造を行った際にも採用されましたが、交直両用車でこれを行った結果、直流区間では冷房が使用できない事態となってしまいました。実際には当該車輌は下関までの運用に限定していたようですが、それでも「関門トンネルは非冷房」とは何とも割り切ったものですな。